退去精算書(敷金精算書)の書き方
管理会社・大家さん向け|国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にもとづく|最終更新
結論
退去精算書には、物件・借主・入居日と退去日などの基本情報と、修繕項目ごとの「工事金額・経過年数・貸主と借主の負担割合と金額」、敷金から差し引いた返還額(または追加請求額)を書きます。 国土交通省のガイドラインにある精算明細書の様式(別表4)に沿い、通常損耗は貸主の負担とし、借主の負担分には耐用年数による負担割合をかけるのが基本です。
記載する項目
基本情報
- 物件名・部屋番号・所在地
- 借主と貸主の氏名(管理会社名)
- 契約日・入居日・退去日
- 借主の転居先(住所・電話)
- 精算金額(返還額または追加で請求する額)
修繕項目ごとの明細
- 対象箇所(壁クロス、フローリング、畳、鍵など)
- 修繕の内容(洗浄・補修・塗替・張替・交換など)
- 単価・単位・数量・工事金額
- 経過年数(または入居年数)
- 貸主の負担(割合と金額)
- 借主の負担(割合と金額)
原状回復以外の精算
- 未払いの賃料、退去月の日割り賃料
- 短期解約違約金(契約で定めがある場合)
- 敷引き(契約で定めがある場合)
- 預かっている敷金と、差し引いた返還額
- 返還・支払いの期日と振込先
基本情報と明細は、ガイドラインの別表4「原状回復の精算明細書」の様式例による。
記載例
| 物件 | サンプルマンション 302号室 | 構造 | RC造・SRC造(マンション等)(耐用47年) |
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| 借主 | 山田 太郎 | 貸主 | 佐藤 花子 |
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| 入居日 | 2020年4月1日 | 退去日 | 2024年4月1日(入居期間 4年) |
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原状回復費用の明細
| 対象箇所・内容 | 原因 | 単価 × 数量 | 工事金額 | 経過年数 | 借主の負担 | 貸主の負担 |
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壁・天井クロス(張替) リビング 落書き2面 負担範囲 15㎡/工事 30㎡(範囲外は貸主)/耐用6年/経過4年 → 借主負担33.3% | 借主の過失等 | 1,200円 × 30㎡ | 36,000円 | 4年 | 6,000円 16.7% | 30,000円 83.3% |
フローリング(全体張替)(張替) 洋室 全体の傷・へこみ 耐用47年/経過20年 → 借主負担57.4% | 借主の過失等 | 15,000円 × 10㎡ | 150,000円 | 20年 | 86,170円 57.4% | 63,830円 42.6% |
畳表(表替) 日照による変色 通常損耗・経年変化のため貸主負担 | 通常損耗 | 5,000円 × 6枚 | 30,000円 | — | 0円 0.0% | 30,000円 100.0% |
ハウスクリーニング 通常の清掃済み 通常損耗・経年変化のため貸主負担 | 通常損耗 | — | 50,000円 | — | 0円 0.0% | 50,000円 100.0% |
| 合計 | 266,000円 | | 92,170円 | 173,830円 |
| 敷金(保証金) | 120,000円 |
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| 原状回復費用(借主負担) | − 92,170円 |
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| ご返還額 | 27,830円 |
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- 負担割合は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」の耐用年数・経過年数の考え方に基づきます。耐用年数を経過した設備の残存価値は1円としています。
- 畳表・襖紙・障子紙・フローリングの部分補修・建具・柱・鍵の紛失・クリーニングは、ガイドライン上、経過年数を考慮しません。
- クロスの借主負担は㎡単位が望ましく、毀損箇所を含む一面分までが目安です。色や柄を合わせるために広く張り替えた分は貸主の負担です(喫煙で居室全体が変色した場合を除く)。
- 耐用年数を経過していても、落書きなど故意の毀損は工事費の一部の負担を求められることがあります。
- 特約による負担は、特約の内容と合意の状況によって有効性が個別に判断されます。
- 金額は税込です。敷金から差し引く原状回復費用には消費税がかかります(居住用の賃料は非課税)。
上記の内容を確認しました(借主) 日付 年 月 日
署名
退去精算書メーカーで作成
出力される精算書の例(国交省の参考資料のケーススタディの数字)クロスの落書き(入居4年・工事費36,000円のうち負担範囲の2面分)、フローリングの傷、畳の日焼け、通常の清掃済みのハウスクリーニングを精算した例です。数字は国交省の参考資料のケーススタディと同じです。
作り方の手順
- 1
退去の立会いで、傷みと原因を記録する
借主と一緒に部屋を確認し、傷み・汚れの箇所を写真に撮ります。通常の使用によるものか、借主の故意・過失によるものかを、その場で確認しておくと後の説明が楽になります。
- 2
修繕の見積もりを取る
業者の見積書が、精算書の単価・数量・工事金額の根拠になります。
- 3
項目ごとに、貸主の負担か借主の負担かを分ける
通常損耗・経年変化は貸主の負担で、借主には請求できません(民法621条)。借主の負担にするのは、故意・過失や手入れ不足による損耗だけです。
- 4
借主の負担分に、経過年数による負担割合をかける
借主の負担割合 = 1 −(経過年数 ÷ 耐用年数)。クロスは6年、流し台は5年など、部位ごとの耐用年数を使います。畳表・襖紙・障子紙・鍵などは経過年数を考慮しません。
- 5
敷金から差し引き、返還額または追加請求額を出す
原状回復費用のほか、未払い賃料なども敷金から差し引けます(民法622条の2)。返還期日と振込先を書いて借主に渡し、署名をもらいます。
書くときの注意点
- 通常損耗を「年数分引いて」請求しない
- 家具の設置跡や日焼けなど、通常の使用による損耗は、経過年数に関係なく全額が貸主の負担です。負担割合の計算は、借主の故意・過失による損耗にだけ使います。
- 負担の範囲は「傷をつけた単位」まで
- クロスは㎡単位が望ましく、借主の負担は傷をつけた箇所を含む一面分までです。畳は原則1枚単位、フローリングは原則㎡単位です。色を合わせるための部屋全体の張替えは、原則として貸主の負担です。
- 特約は、有効な条件を満たすときだけ使える
- ハウスクリーニングなど借主に特別の負担を課す特約は、①必要性があり暴利的でない、②借主が通常の原状回復を超える負担だと認識している、③借主が負担する意思を示している、の3つを満たす必要があります。
- 消費税の扱いを書いておく
- 敷金そのものは預かり金で消費税はかかりませんが、敷金から差し引く原状回復費用には消費税がかかります。金額が税込か税抜かを明記します。
- 計算の根拠を1行ずつ残す
- 耐用年数・経過年数・負担割合を項目ごとに書いておくと、借主が内容を確認しやすく、後から問い合わせがあっても説明できます。
負担割合の計算方法と耐用年数の一覧 ・ 症状ごとの負担の判定
よくある質問
- 退去精算書に決まった書式はありますか?
- 法律で決まった書式はありません。国土交通省のガイドラインに「原状回復の精算明細書」の様式例(別表4)があり、多くの管理会社がこれに近い形を使っています。
- 敷金精算書と退去精算書は違うものですか?
- 同じものを指すことがほとんどです。敷金から原状回復費用や未払い賃料を差し引いて、返還額(または不足額)を示す書類で、解約精算書と呼ぶこともあります。
- 借主の署名は必要ですか?
- 法律上の必須ではありませんが、精算の内容に同意したことを残すため、署名欄を設けて署名をもらうのが一般的です。
出典:
この解説はガイドラインにもとづく一般的な目安で、個別の事案についての法的な判断ではありません。